インターナショナル・ビアコンペティション 2005 審査講評

インターナショナル・ビアコンペティション

審査委員長 田村 功

 「インターナショナル・ビール・コンペティション2005」の審査は、9月23日午前10時より東京墨田区・すみだ産業会館で行われた。今回は、61社から141銘柄のビールおよび発泡酒が参加した。エントリーされたスタイル・カテゴリーは、全部で45部門。それぞれの部門ごとに「外観」「アロマ」「フレーバー」「ボディ」「全体印象」など5項目の評価をもって、金・銀・銅の3賞が競われた。

 今年の審査でエントリー数が多かったものを部門別にトップ5を挙げると、ヘーフェヴァイツェン、ジャーマン・ピルスナー、ミュンヒナー・ヘレス、ケルシュ、アルトの順位。昨年と同様にドイツ系のスタイルが主流を占めた。

 最多のエントリーとなったヘーフェヴァイツェンは、地ビールやクラフトビールを代表するスタイルであるだけに、出来栄えについてはいずれも高いレベルを見せてくれた。昨年多く見られたオフフレーバーもすっかり陰をひそめた。強いて難点を探せば、苦味ないし酸味のレベルがヴァイツェンの基準をやや上回るものが少し見られたことくらいだろうか。したがって審査はヴァイツェンとしての「魅力の競い合い」となり、最も審査員の感動を勝ち得たものから順に3賞が選ばれた。

 ジャーマン・ピルスナーに関しても、今回は揃って高いレベルを感じさせてくれた。以前によく見られた生っぽい穀物臭や硫黄臭、それからエグ味や収斂味も、今回はほとんど姿を消した。審査のポイントは状態・バランス・アフターテイストの3点に絞られ、結局、ホップ・アロマを綺麗に引き出しながら、甘味を抑えたドライな味わいを背景に爽やかな苦味をつけることに成功し、かつ鮮度を高く保っているものが、最後に賞を獲得した。

 ミュンヒナー・ヘレスが10銘柄を超すエントリーになったのは、今回が初めてである。アロマ・フレーバーが穏やかで一度に大量に飲んでも飲み飽きないビールという、いわゆる「フツーのビール」の消費者の要望に、地ビールが応え始めことによるものと推測される。しかし、エントリーされたビールは優劣の差が激しく、レベルの高いものと低いものに2分された。レベルの低いグループには、色が基準範囲を超えて濃かったり、ホップ・アロマのレベルが高かいものがあり、こうしたビールはいくら美味しくてもヘレスのスタイル基準から外れている(つまりヘレスではない)ので減点。また、渋味・収斂味が強いもの、未熟臭を持つものもあって、これらは状態の項目で大きく減点された。その一方、レベルの高いグループのビールは、スタイル基準、状態、バランスのいずれにおいても秀でていた。入賞した3点は、ヘレスというスタイルにとって最も重要な「ドリンカビリティ」の点で他を圧していたことが、審査員の中で高く評価された。

 ケルシュについては、エントリー数において昨年をやや下回ったが、オフフレーバーもなく、状態もまずまずで、出来栄えにおいては非常に高いレベルのものばかりであった。ケルシュは上面発酵のビールであるが、エステルに関しては、イギリス系エールの特徴となるようなソルヴェント香(酢酸エチル)やバナナ香(酢酸イソアミル)はご法度で、リンゴ香(ヘキサン酸エチル)、イチゴ香(オクタン酸エチル)、ワイン香(デカン酸エチル)などの混合香を特徴とする。また、ダイアセチルが感じられてはならない。審査では、こうしたエステルが甘味・苦味・アフターテイスト・カーボネーションといかに綺麗に調和・バランスがとれているかが問われ、その点で傑出したビールが3賞に選ばれた。

 今回の審査で一番印象に残ったのはアルトであった。例年、この部門にエントリーされるビールは粒揃いのものばかりで3賞の選考に難儀を極めるが、今回はすべてが入賞に値するレベルを確保していた。そのため、6人の審査員はそれぞれ自分の推薦するビールを主張して譲らず、なんとか3つのビールが3賞の候補に絞られたものの、その順位を決めるのにまた議論が紛糾。長時間にわたりもめにもめ、ようやく銅賞は決定したが、銀賞・金賞を決めるのはすべての審査が終った後に持ち越された。そして、審査員の先入観をリセットするために、グラスに付けられたナンバーをまったく違うものに付け替えての決戦投票の結果、ようやく金・銀の順位が決定した次第である。

 その他の部門では、上記ほど多数のエントリーがなかったとはいえ、非常にレベルの高いものが数多く出品されていたことを強調しておきたい。なかでも、アメリカン・ペールエール、アメリカン・アンバーエール、ゴールデンエール/ブロンドエール、ロブスト・ポーター、フルーツビールの5部門においては、入賞と選外の差はほんとうに紙一重であった。また、フリースタイルの節税型発泡酒の部門で入賞したビールは、使用する原料の面で大きな制限を受けながらも、大手市販の発泡酒に負けない高いレベルをキープしており、しかも大手とは一線を画した魅力をつくりだしていたことを高く評価したい。

 今回もビールをご出品いただいたビールメーカーなびに販売会社の各位には、心からお礼を申し上げる。また、連休中にもかかわらずボランティアでビールの審査に参加し、準備・進行・管理にあたってくださった日本地ビール協会会員諸兄姉には厚く感謝の意を表したい。

以上

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