インターナショナル・ビアコンペティション 2011 審査講評

インターナショナル・ビアコンペティション
審査委員長 田村 功

  「インターナショナル・ビアコンペティション2011」の審査は、8月27日午前9時30分より東京の恵比寿ガーデンプレイス「ザ・ガーデンルーム」で行われた。今回は、51社から165銘柄のクラフトビールおよびクラフト発泡酒が参加した。

 そのうち、海外からは18銘柄が参加して文字通りインターナショナルなコンペティションとなった。さらに審査員も、イギリス、デンマーク、ルーマニア、中国(上海)、アメリカ、シンガポールの5ケ国から計8名が参加し国際色豊かな審査会になった。海外からの審査員はいずれも、WBC、BIIAを始め数々の国際的なビアコンペティションを経験しているベテランのジャッジで、うち7人がブルーワーである。ちなみに日本人のジャッジは27名(ブルーワー7人を含む)である。

 海外から参加したクラフトビールのうち入賞の栄誉に輝いたのは、アメリカ、イギリス、シンガポールのビールである。アメリカとイギリスはクラフトビールの先進国であるが、シンガポールで本格的にクラフトビールが造られるようになったのは2000年になってからと日が浅い。しかも、今回複数の銘柄が入賞したアジア・パシフィック・ブルワリー傘下のArchipelago社がクラフトビール市場に参入したのが2006年というから、短期間のうちにここまで品質を高めたことは驚きに価する。同時に、アジアのクラフトビール市場が急速に発展しつつあることが伺えて、実り多いコンペティションとなった。

 さて、今回の審査全体についての感想は、日本のクラフトビールの品質が確かな足取りで向上していることと、それだけに入賞へのハードルも非常に高くなっていることである。また、今回は著名な国際コンペティションで審査している外国人ジャッジが審査のテーブルに加わったことで、ハードルはいっそう高くなった。そうしたなかで、ボトル部門で14銘柄、ケグ部門で12銘柄の金賞が出たことは、まことに喜ばしい。これらのビールは、掛け値なしに最優秀ビールである。とは言っても、銀賞や銅賞の銘柄が決して劣るわけではない。

 たとえば、3賞が揃った「デュッセルドルフ・アルトビール」「ベルジャン・ホワイト」「フリースタイル・ライトラガー」(いずれもボトル部門)、「フルーツ&フィールドビール」「ジャーマン・ジュヴァルツビール」(ケグ部門)、「南ドイツスタイル・ヘーフェヴァイツェン」「ジャーマン・ケルシュ」(ボトル・ケグの両部門)などの各カテゴリーでは、1審査テーブル7人の審査員が白熱した議論の上でも結論が出ず、最終的に挙手によって4対3という実に1票差で賞の順位が決まった。1票の重さを感じるとともに、実のところ「甲乙付けがたい」とも言えるだろう。

 入賞のハードルが高くなったことを強く感じたのは、「ジャーマン・ピルスナー」で銀賞が出なかったことである。ボトル・ケグの両部門を通じて金賞はすぐに決まったが、次点のビールは残念ながら銀賞に及ばなかった。「アメリカン・ペールエール」については、両部門共に最高が銀賞どまりであった。「ゴールデン/ブロンドエール」(ボトル部門)も同様であった。これらのカテゴリーはエントリー数も非常に多く、3賞が揃って出ることが期待されたが、残念ながらそのような結果にはならなかった。

 以上をもって「インターナショナル・ビアコンペティション2011」の講評とするが、最後に、ビールをご出品いただいた内外のビールメーカーならびに販売会社の各位には、心からお礼を申し上げたい。また、ボランティアでビールの審査に参加してくださった内外のブルーワーやジャッジの皆さん、準備・進行・管理にあたってくださったスチュワードの方々には
厚く感謝の意を表したい。

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