ジャパン・アジア・ビアカップ(ビール鑑評会)2009 審査講評

   

“ビール鑑評会2009” 審査委員長 田村功 
    

 「ジャパン・アジア・ビアカップ2009」には、50社より合計133銘柄のビールがエントリーされ、去る44日に東京・大田区産業会プラザにおいて25名のジャッジによって審査が行われた。

 エントリーされたカテゴリーのうち、ボトル/缶ビール部門で最も多かったのはピルスナー・ファミリー(ボヘミアピルスナー、ジャーマンピルスナー、ヨーロピアンピルスナー)とアメリカンエール(ゴールデンエール、アメリカン・ペールエール、アメリカンIPA、アメリカン・アンバーエール)であった。

 このところ麦芽100%のピルスナー系ビールが大手メーカーから相次いで新発売されているが、スタイルガイドラインに照らしてみる限りホップアロマと苦味の点において正統派と認められるものは少ない。この点で地ビールのピルスナー系ビールはいずれもピルスナーらしいキャラクターをしっかり感じさせて「通」の期待を裏切らないものが多い。そのなかでも今回のボトル/缶ビール部門に出品されたビールは極めて高い水準にあるものばかりで甲乙つけがたく、アロマの上品さ、苦味のクリーンさ、後味の爽やかさにおいて審査員たちをうならせ、予定の審査時間をすぎても入賞ビールが決まらなかったほどである。

 アメリカンエールについては、アメリカン・ホッブを派手に効かせ、強烈な苦味を加味したインパクトの強いビアスタイルで構成されているカテゴリーであるが、インパクトの強さだけでは一口目は魅了されてもグラスを重ねるうちに飽きがくる。今回は、とくに全体のバランスに注目して審査が行われ、飲み飽きないもののうち上位3点が選ばれた。

 ケグ/ドラフトビール部門での最多エントリーはヴァイスビールであった。ヴァイスビールに関しては、もう数年前から本場ドイツの小麦系ビールを凌駕するほどの出来栄えに達しており、日本では地ビールを代表するスタイルとして定着した観があるが、このことは今回の審査でも確認できた。南ドイツスタイル・ヴァイスビールの特徴であるクローヴ香のレベルは、それぞれスタイルガイドラインの規準内で強調したもの・穏やかなものと違いがあって審査員の好みが分かれたが、全体のバランスについては満場一致で高い水準にあることが認められた。

 おなじケグ/ドラフトビール部門のうち、エントリー数で第2位のスペシャルビールのカテゴリーにはフリースタイルのビールが多数出品された。まさに百花爛漫の観があったが、「フリースタイルは既存のスタイルに束縛されず造り手のオリジナリティーを打ち出したビール」という審査の狙いに照らすと、いずれも物足りなさが残った。しかし、ビールとしての出来の良さ、とくに全体のバランスの観点からは高い水準をキープしており、地ビール業界の技術レベルの高さがあらためて知らされた。

 「造り手のオリジナリティー」といえば、ボトル/缶ビール部門のフレーバーラガーに出品された中にちょっと面白い狙いのものがあった。フルーツビールであるが、このスタイルは一般的にエールでつくられることが多い。しかし、出品されたビールはラガーでつくった。その心意気とオリジナリティーに審査員の期待が高まったが、あえてラガーでつくった意義が伝わってこなかったのが残念であった。

 昨年も同じようなことを書いたと記憶しているが「ジャパン・アジア・ビアカップ2009」にエントリーされたビールもまた、国際的な観点から非常に高いレベルをキープし続けていることが強く確信できた。また、「フレーバーの多様性」の点でも現時点では大手メーカーのビールの追随を許さない観がある。こうした状況を敏感に感じて地ビールに関心を持つ消費者が着実に増えており、地ビールのビアパブも盛況であることはまことに喜ばしい。醸造関係の方々には、ここまで達成された地ビールの品質レベルをこれからもキープし続けるとともに、絶えざる切磋琢磨によりさらなる「魅力づくり」に努めていただきたい。また、流通・販売関係の方々には、世界のトップレベルに達している地ビールの品質を損なわずに消費者に届ける努力をお願いしたい。

 最後に、出品にご協力くださったメーカーおよび販売会社各位に衷心より厚くお礼を申し上げたい。また、無報酬で準備や審査に協力してくれたボランティアのみなさんにはこころから感謝の気持を表したい。

 以上


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