ジャパン・アジア・ビアカップ(ビール鑑評会)2011 審査講評

   

“ジャパン・アジア・ビアカップ2011” 審査委員長 田村功 
    

 「ジャパン・アジア・ビアカップ2011」の審査が、去る5月15日、東京・すみだ産業会館サンライズホールで行われた。今回のエントリーは54社より合計144銘柄となった。東日本大震災の影響が危惧されたなかで、予想以上の参加数となったことに、まずもって感謝の意を表したい。また、大きな被害を受けて不参加を余儀なくされたブルワリーの方々には、心よりお見舞い申し上げたい。

 今回のエントリーの内訳を見ると、ボトル/缶ビール部門・ケグ/ドラフトビール部門ともに最多数を占めたカテゴリーはヴァイスビールであった。これに続いて多かったカテゴリーは、ボトル/缶ビール部門でライトラガーとフレーバービール、ケグ/ドラフト部門ではライトラガーとダークエールであった。

 ヴァイスビールについては、今回も国際水準を上回る出来映えのビールが出揃い、日本のクラフトビールを代表するスタイルとして定着した感がある。ボトル/缶ビール部門に出品されたものは、いずれもクローヴ香が上品に付与されていて飲み飽きない。ケグ/ドラフト部門については、上品なクローヴ香のほかにみずみずしさが加わり、フレッシュ感きわまりない魅力を備えているものが多かった。どちらの部門も、全体のバランスに秀でたものが受賞に輝いた。

 ライトラガーについては、エントリー数こそヴァイスビールに次ぐ多さであったが、その出来栄えは残念ながら玉石混淆と映った。ボトル/缶ビール部門
の場合は、きれいな飲み口に仕上がっているものの、甘みの切れが十分ではなく飲み飽きるものが多くみられた。これに比べるとケグ/ドラフト部門に出品されたライトラガーは、グレーン臭が感じられたものを除き、全体として高いレベルに仕上がっていた。いまよりもっと熟成に時間をかければ、さらに高い水準に達するに違いない。

 フレーバービールについては年々エントリー数が増えてきている。今回もボトル・ケグ部門を合わせると、11銘柄が出品された。使用されたフレーバー原料は、コーヒー、レモングラス、カブ、パイナップル、マンゴー、みかん、金柑、夏みかん……と多種多様である。こうしたフレーバー原料の選択には、ブルーワーの嗜好もさることながら、なによりも地元特産物をアッピールしたいという心が働いているものと思われる。そうした観点から、これからも各地の特産品を使ったフレーバービールがたくさん造られることが望ましい。ただし、ホップの代わりにフルーツなどの香味原料を使うといった安易な造り方では、口の肥えた消費者に受け入れられるような魅力的なビールは生まれない。麦芽100のビールの美味しさは「苦味と甘み」のバランスで決まるが、フルーツ系のビールの場合は「酸味と甘み」のバランスがことのほか重要だ。今回は、カブを使ったビールが異色であった。入賞は逸したが、カブの香りを上品に薫らせながらみずみずしい口当たりとジューシーな味わいがバランスよく整った秀作である。

 ケグ/ドラフト部門のダークエールについては、エントリー数に比して完成度の高いものが少なかった。ダイアセチルや有機酸などの未熟臭が残ったまま出品されたものが多く、十分な熟成期間を経てからパッケージングすることが求められる。そうした中で、比較的欠点の目立ちにくい複雑かつ濃厚な味わいの高アルコール・ビールが上位を占める結果となった。

 「ジャパン・アジア・ビアカップ」の審査基準となる「ビアスタイルガイドライン」が、今回から改訂された。昨年までのガイドラインに基づいてカテゴリーを決めたエントリーの中に、“スタイル違い”として審査中にはねられるビールがあったのが、まことに遺憾である。また、ケグ/ドラフト部門にエントリーしたビールの中に、中身とは異なる荷札をつけて送付したメーカーがあり、こうしたビールも“スタイル違い”としてはねられた。次回は、新しいビアスタイルガイドラインに従ってエントリーを決めていただくことと、ケグの送付の際には中身と荷札の確認を十分おこなっていただくことをお願いしたい。

 最後に、出品にご協力くださったメーカーおよび販売会社各位に衷心より厚くお礼を申し上げたい。また、無報酬で準備や審査に協力してくれたボランティアのみなさんにはこころから感謝の気持を表したい。

 以上


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